講習を受けるだけで取れる資格を調べたら防火管理者が出てきたけど、どんな資格なのかな?
防火管理者の資格を取ろう!と思っても、身近な資格ではないため知らないことも多いですよね。
本記事では防火管理者とはどんな資格なのかということから、取得方法や資格要件、防火管理者の仕事について解説していきます。
この記事を読めば防火管理者がどのような資格なのか、詳しく知ることができます。
☆防火管理者とは?
防火管理者とは、建物や施設における火災予防および火災発生時の安全確保を担当する責任者のことです。
日本では消防法に基づき、一定規模以上の建物や施設では防火管理者を選任することが義務付けられています。
例えば防火対象物である、映画館、病院、学校などの場所では防火管理者が必要になるので、管理者に任命したい人に対し、資格取得を指示します。
防火管理者を選任しなければならない建物は以下の通り⇩
・延べ面積が150㎡以上の建物
・収容人数50人以上の施設
・学校、病院、劇場、飲食店、ホテル、デパート、オフィスビルなど、火災発生時に多数の人が影響を受ける可能性がある建物
・危険物を取り扱う施設(ガソリンスタンド、工場など)
大きい建物を管理する上で絶対必要になる資格ってことだね
☆防火管理者の資格取得方法
防火管理者の資格取得の条件は、防火管理者講習を受講して効果測定試験に合格することです。(特例あり)
1,年齢制限や学歴要件はなし
防火管理者の資格取得には、特別な学歴や年齢制限はありません。
とは言うものの、日本防火・防災協会のホームページでは、
「中学校卒業程度以上で日本語が理解(読み書き、会話)できる方を対象としています」
と記載されているので、誰でもというわけではありません。
2,講習の受講
消防署や自治体が指定する機関が実施する防火管理者講習を受講する必要があります。
講習内容は以下のようなテーマが含まれます。
・消防法令に関する基礎知識
・火災予防の基本と火災時の対応
・消防計画の作成方法
・消火設備の種類と点検方法
・避難誘導や避難訓練の計画と実施
・危険物の取扱に関する知識
講習の期間は乙種約5時間(1日)、甲種約10時間(2日)で、講義形式で行われるのが一般的です。
※乙種、甲種については後程説明します。
講習の最後に試験という名のものがありますが、基本的には受講者全員が合格できます。
そのため合格率はほぼ100%です。
難易度は非常に低いと言っていいでしょう。
注意!
講習中に居眠りしたり態度が悪かったりすると資格を貰えなくなるので、真面目に講習は受けましょう。
3,講習の種類
防火管理者講習は、建物や業種によって異なる種類が用意されています。
甲種防火管理者講習
収容人数や施設規模が大きい建物の防火管理者を対象。
乙種防火管理者講習
比較的小規模な施設や建物の防火管理者を対象。
ポイント
一般的に大規模な施設では「甲種防火管理者」の資格を求められることが多いです。
4,特例
特例1
大学、短期大学、高等専門学校で防災に関する学科や課程を修めて卒業したもので、1年以上防火管理の実務経験を有する。
学歴と実務経験がある人は、自分が条件を満たしているか各自治体の消防署に確認しましょう。
特例2
消防職員である。
この場合、市町村の消防職員で、管理的又は監督的な職に1年以上あったことが条件です。
特例3
一定の学識経験を有している。
以下の9つの項目の、いずれかの学識経験を満たしている。
・市町村の消防職員で、管理的又は監督的な職に1年以上あった者
・労働安全衛生法第11条第1項に規定する安全管理者として選任された者
・防火対象物点検資格者講習の課程を修了し、免状の交付を受けているもの
・危険物保安監督者として選任された者で、甲種危険物取扱者免状の交付を受けているもの
・鉱山保安法第22条第3項の規定により保安管理者又は保安統括者として選任された者
・国若しくは都道府県の消防の事務に従事する職員で、1年以上管理的又は監督的な職にあった者
・警察官又はこれに準ずる警察職員で、3年以上管理的又は監督的な職にあった者
・建築主事又は一級建築士の資格を有する者で、1年以上防火管理の実務経験を有するもの
・市町村の消防団員で、3年以上管理的又は監督的な職にあった者
(参照:東京消防庁)
ポイント
防火管理者資格を取得したいときは、当てはまる学識をもっていないか確認してからにしましょう。
5,資格の有効期限
現在、防火管理者の資格に有効期限はありません。
一度資格を取得すれば、基本的に更新手続きは不要です。
ポイント
それでも継続的に最新の知識を学ぶための研修や訓練に参加することが推奨されています。
施設の安全を確保するため、資格取得後も実務における知識と経験が重要です。
☆防火管理者の仕事とは?
建物や施設において火災が発生するリスクを最小限に抑え、万が一火災が発生した場合に被害を軽減するための業務を幅広く担当します。
ここでは防火管理者の主な業務を7つ、簡単に紹介していきます。
1,消防計画の作成・管理
このような消防計画書の作成と管理が、防火管理者な主な業務の1つとなります。
内容例としては、避難経路、消火器の配置、火災時の初期対応マニュアルなどを記載します。
ポイント
書き方は講習で貰えるテキストや、各自治体のホームページを参考にしましょう。
2,消火設備の点検・維持
消火器の有効期限チェック、スプリンクラーの動作確認、火災報知器の点検、維持も、防火管理者の重要な仕事の1つです。
設備が正常に作動するか、定期的に確認する必要があります。
3,避難訓練の計画・実施
防火管理者は、避難訓練を計画し、実施する責任も負います。
訓練内容としては、避難経路の確認、初期消火訓練、緊急時の連絡手順などが挙げられます。
学校や会社の避難訓練は防火管理者のおかげでできるんだね
4,火災リスクの評価と防火対策の実施
火災の原因となりえる場所の点検や、危険物の取り扱いに関する指導を行い、火災予防のための適切な措置を講じるのも防火管理者の仕事です。
厨房やボイラー室など火気使用設備の点検、タバコの吸い殻処理の指導などが挙げられます。
5,従業員・入居者への防火教育
従業員や入居者に対して防火に関する教育を行い、火災発生時の行動方法を理解させることも業務の一環です。
消火器の使い方講習、火災報知器の仕組み説明、避難時の行動指導などを行う必要があります。
6,消防署との連携
消防署と連携して消防計画の提出や、訓練内容の報告を行います。
業務としては、消防計画の提出、消防署の指導に基づく改善策の実施などになります。
7,防火管理者の業務記録の作成・保管
消防設備の点検結果や避難訓練の実施記録を作成し、保管する必要があります。
業務としては、設備点検報告書の作成、避難訓練実施報告の記録など。
防火管理者は火災予防の責任者として、施設の安全と従業員や利用者の命を守る重要な役割を担っています。日常的な管理だけでなく、緊急時の対応力も求められ、非常に責任の重い仕事です。
☆防火管理の重要性について
みなさんは「明星56ビル火災(歌舞伎町ビル火災)」をご存じでしょうか?
2001年9月1日に発生。建物の3階と4階の160㎡を焼失し、死者44人を出す大惨事となりました。
戦後5番目に犠牲者が多い火災です。
この火災によって、ビル所有者やテナント業者のずさんな管理が露になりました。
自動火災報知設備の不作動
自動火災報知設備が作動した形跡はなく、発見・通報が遅れ、初期消火は行われませんでした。
一つしかない避難路が遮断
このビルには屋内階段以外に有効な避難手段がなく、その一つしかない屋内階段近くから出火したため、3階と4階にいた人たちの避難路が絶たれてしまっていました。
障害物による防火戸の不作動と構造の不良
階段室は狭い上に大量の可燃物が置かれていて、防火区画のための防火戸が有効に閉鎖されませんでした。
また店舗では窓の開口部が少なく密室構造であったため、濃煙、熱気が一気に充満し、多くの人が逃げ遅れる原因の一つにもなりました。
加えてビルの外壁面の広告版が避難や消防活動の障害となり、被害拡大につながりました。
防火管理のずさんな対応
消防署による立入検査で、防火管理者が選任されていない等の数々の不備を指摘されていたにも関わらず、改善されていませんでした。
過失
この火災では、犠牲者が出た3、4階店舗の経営者ら計6人を業務上過失致死傷容疑で逮捕しました。
この内4人が禁錮年(執行猶予5年)、1人が禁錮2年(執行猶予4年)に処されています。
歌舞伎町ビル火災を受け、ビルなどの防火管理体制が強化され、2002年10月に消防法が改正されました。
ここだけの話
実はこの火災については、防火管理者講習の中で教えてもらいました。
防火管理の重要性と仕事について知るきっかけになったので紹介させてもらいます。
☆さいごに
ここまで読んでいただきありがとうございます。
防火管理者の資格取得方法や仕事について紹介させていただきました。
火災を防ぐだけでなく、人の命や財産を守るための役割も担っています。
資格自体は簡単に取れるけど、かなり責任感のある仕事ですね。
ただ消防士じゃなくても、火災から人々を守るという使命を果たすことができます。
役割や責任は重いけど、それだけやりがいのある仕事とも言えます。
この記事が、皆さんの背中を押すきっかけになれば幸いです。